飽和、ねじれ、contorsion
RTTにおいて、テンペラメントが飽和しているとは、その音程の集合がマッピングまたはコンマ基底から示唆される集合と一致していることを表す。マッピングが失敗している場合をcontorsion (contorted)といい、コンマ基底が失敗している場合をねじれ (torsion)という。
Contorsion
ねじれ群
テンペラメントをコンマ基底で定義することを考える。例えばミーントーンは81/80 = ⟨-4 4 -1]をテンパーアウトする。これはもともとあった5リミットの音程の3次元格子が、「5/1と(3/2)^4を同一視する(すなわち1/1と81/80を同一視する)」という条件により5/1の方向の点が片付いて2次元格子に縮小することになる。イメージしづらかったら、5/1の方向と3/2の方向だけを取り出した方眼紙(2次元格子)を、5/1と(3/2)^4が重なるように巻くと方眼紙のすべての点が(3/2)^nとして(1次元格子)説明できるようになるイメージを思い浮かべてください。
では81/80ではなく(81/80)^2 = 6561/6400 = ⟨-8 8 -2]をテンパーアウトするという定義にしたらどうなるか? 1/1と(81/80)^2を同一視するのだが、では81/80はどうなるのか? この定義は81/80を1/1と同一視しろとは書いていない。方眼紙の例なら巻き付け方を2倍に緩めて、1点の(81/80)^nだった音程が(81/80)^(2n)と(81/80)^(2n+1)に分裂することになる。そして(81/80)^2=1/1となり、81/80の方向はべき数2の捩れ部分群となる。
ここまでが純粋に抽象的な群の定義として見た場合である。ここからレギュラーテンペラメントとしてピッチへのマッピングを目指すと、(81/80)^2=1/1=0セントである以上√(81/80)^2=81/80も0セントにするしかない。もし仮に周波数が複素数であるとか、周波数と空間オーディオの音源位置情報を各音符に盛り込むとかいうことがあれば、これを過不足なく写すマッピングを [math]\displaystyle{ \left[ \begin{array}{rrrrrl} +1200 \mathrm{cent} & \langle & 1 & 1 & 0 & ]\\ +697 \mathrm{cent} & \langle & 0 & 1 & 4 & ]\\ +\pi \mathrm{radian} & \langle & 0 & 0 & 1 & ] \end{array} \right] }[/math]
などと組み立てることができるが、実数の周波数のみが求められているのであれば3行目を残しておく余地はない。そもそも3行目の捩れ部分群が生じるような定義はRTT的には問題があるのでコンマ基底を正規化するべきだということである。