「OtonalityとUtonality」の版間の差分

スケール: 参考文献を更新
編集の要約なし
 
41行目: 41行目:


=== 序論 ===
=== 序論 ===
純正コードが与えられたとき、どのようにしてわれわれはotonalなコード(倍音で構成されたコード)かutonalなコード(下倍音で構成されたコード)かを判断できるだろうか。最初は、それは明らかだと思われるだろうが、しかし実際は驚くことに微妙なものなのである。たとえば、10:12:15 という純正コードは、5奇数リミットのutonality(Utonalの名詞形)(1/6:1/5:1/4)である。しかしまた、10,12,15倍音による15奇数リミットのotonalityとも受け取れる。1つの筋の通った定義は、もし最大の奇数が、そのInverse(その中の全ての周波数比を逆数にした和音)の最大の奇数より小さい場合、それはotonalであり、そしてinverseがより小さい最も大きい奇数を持つならば、utonalである。言い直すと、コードをinvertすることによって[[アドリミット|奇数リミット]](otonal limit)が増加するならば元のコードはotonalで、減少するならばutonalである。つまり 4:5:6(長三和音)はotonalである。なぜならばそのinverseである 10:12:15(短三和音)よりも単純であるからである。そしてまた、10:12:15 はutonalである。なぜならそれは 1/6:1/5:1/4 とより単純に表されるからである。ここで我々は整数リミットではなく奇数リミットを使っているため、この定義はコードヴォイシングに影響されない。4:5:6 が 3:4:5 や 2:3:5 にヴォイシングされても変わらずotonalである。
[[純正律]]のコードが与えられたとき、どのようにしてわれわれはotonalなコード(倍音で構成されたコード)かutonalなコード(下倍音で構成されたコード)かを判断できるだろうか。最初は、それは明らかだと思われるだろうが、しかし実際は驚くことに微妙なものなのである。たとえば、10:12:15 という純正コードは、5奇数リミットのutonality(utonalの名詞形)(1/6:1/5:1/4)である。しかしまた、10,12,15倍音による15奇数リミットのotonalityとも受け取れる。1つの筋の通った定義は、もし最大の奇数が、そのinverse(その中の全ての周波数比を逆数にした和音)の最大の奇数より小さい場合、それはotonalであり、そしてinverseがより小さい最も大きい奇数を持つならば、utonalである。言い直すと、コードをinvertすることによって[[アドリミット|奇数リミット]](ここではotonal limit)が増加するならば元のコードはotonalで、減少するならばutonalである。つまり 4:5:6(長三和音)はotonalである。なぜならばそのinverseである 10:12:15(短三和音)よりも単純であるからである。そしてまた、10:12:15 はutonalである。なぜならそれは 1/6:1/5:1/4 とより単純に表されるからである。ここで我々は整数リミットではなく奇数リミットを使っているため、この定義はコードヴォイシングに影響されない。4:5:6 が 3:4:5 や 2:3:5 にヴォイシングされても変わらずotonalである。


補足をすると、4:5:6 のinverseは 1/6:1/5:1/4 であり、最小公倍数を掛けて整数化すれば 10:12:15 となる。4:5:6 の奇数リミットは 5 であり、inverseの奇数リミットは 15 である。このとき 5 のほうが 15 より小さいので、4:5:6 がotonalであり、10:12:15 がutonalである。このinverseという用語は一般的に言うinversion/complement(転回音程、コードの転回形)とは異なる意味で、リーマン理論に基づく。
補足をすると、4:5:6 のinverseは 1/6:1/5:1/4 であり、最小公倍数を掛けて整数化すれば 10:12:15 となる。4:5:6 の奇数リミットは 5 であり、inverseの奇数リミットは 15 である。このとき 5 のほうが 15 より小さいので、4:5:6 がotonalであり、10:12:15 がutonalである。このinverseという用語は一般的に言うinversion/complement(転回音程、コードの転回形)とは異なる意味で、リーマン理論に基づく。
48行目: 48行目:


=== 正確な定義 ===
=== 正確な定義 ===
定義をもっと精密にするために、以下の定義を行う。①JIコードを正の有理数の集合で表す。②JIコードの全奇数化ヴォイシングとは、それらの有理数の分母と分子から全ての素因数 2 を取り除く(そしてもともとオクターブ違いなだけで重複していた音程は整理する)ことである。③簡約JIコードとは、ここから分母を払って(システマチックには全分母の{{w|最小公倍数|LCM}}を掛けて分母を解消し、残った分子の{{w|最大公約数|GCD}}を求めて1より大きかったらそれで割る)奇数の集合にすること。
定義をもっと精密にするために、以下の定義を行う。①JIコードを正の有理数の集合で表す。②JIコードの全奇数化ヴォイシングとは、それらの有理数の分母と分子から全ての素因数 2 を取り除く(そしてもともと[[オクターブ]]違いなだけで重複していた音程は整理する)ことである。③簡約JIコードとは、ここから分母を払って(システマチックには全分母の{{w|最小公倍数|LCM}}を掛けて分母を解消し、残った分子の{{w|最大公約数|GCD}}を求めて 1 より大きかったらそれで割る)奇数の集合にすること。


例として、{5/6, 5/3, 5/2, 25/16} というコードを考える。全奇数化すると {5/3, 5/1, 25/1} となり、分母を解消すると {5, 15, 75} となり、比を簡単にすると {1, 3, 15} となる。コードのinverseはコードの全ての有理数を逆数にすることによって得られるので、本例では {6/5, 3/5, 2/5, 16/25} となり、これを簡約形まで持ってくると {1, 5, 15} となる。元のコードの簡約形の最大の奇数とinverseの簡約形の最大の奇数を比較し、元のコードのほうが小さいなら'''otonal'''、inverseのほうが小さいなら'''utonal'''、本例のように等しいなら'''ambitonal'''という。ambitonal chordのほかの例は、8:9:12(sus2コード、inverseにすると 6:8:9 = sus4になって最大奇数は同じ 9 になる)、8:10:15(maj7 omit5、inverseにすると 8:12:15 = maj7 omit3になる)など。
例として、{5/6, 5/3, 5/2, 25/16} というコードを考える。全奇数化すると {5/3, 5/1, 25/1} となり、分母を解消すると {5, 15, 75} となり、比を簡単にすると {1, 3, 15} となる。コードのinverseはコードの全ての有理数を逆数にすることによって得られるので、本例では {6/5, 3/5, 2/5, 16/25} となり、これを簡約形まで持ってくると {1, 5, 15} となる。元のコードの簡約形の最大の奇数とinverseの簡約形の最大の奇数を比較し、元のコードのほうが小さいなら'''otonal'''、inverseのほうが小さいなら'''utonal'''、本例のように等しいなら'''ambitonal'''という。ambitonal chordのほかの例は、8:9:12(sus2コード、inverseにすると 6:8:9 = sus4になって最大奇数は同じ 9 になる)、8:10:15(maj7 omit5、inverseにすると 8:12:15 = maj7 omit3になる)など。


コードがヴォイシングで回文的(つまり上下対称)にできるなら、それはinverseも自分自身になり、もちろんambitonalになる(全てのambitonalが回文コードになるわけではない)。例えばm7(マイナーセブンス)は 1-m3-P5-m7 で間隔を見ると 短3度、長3度、短3度の積み重ねとなっていて回文的であり、ambitonalとなる。<ref>訳者補足: ここで上の短3度を 6:7 と解釈するとか減三和音を 5:6:7 と解釈するとか言わないように。少なくともここまでは純正律のコードであることが前提の説明をしているのであり、短3度が 6/5 と 7/6 のどちらも意味するなら一つ一つどちらなのか判別がつくように書かなければいけない。えっ、[[32/27]] じゃないのかって?そうですね…</ref>
コードがヴォイシングで回文的(つまり上下対称)にできるなら、それはinverseも自分自身になり、もちろんambitonalになる(全てのambitonalが回文コードになるわけではない)。例えばm7(マイナーセブンス)は 1-m3-P5-m7 で間隔を見ると 短3度、長3度、短3度の積み重ねとなっていて回文的であり、ambitonalとなる。<ref>訳者補足: ここで上の短3度を 6:7 と解釈するとか言わないように。少なくともここまでは純正律のコードであることが前提の説明をしているのであり、短3度が 6/5 と 7/6 のどちらも意味するなら一つ一つどちらなのか判別がつくように書かなければいけない。えっ、[[32/27]] じゃないのかって?そうですね…</ref>


==== 二和音と音程 ====
==== 二和音と音程 ====
この定義により全ての{{en仮リンク|monad}}{{en仮リンク|二和音|dyad}}はambitonalである。(二和音(ダイアド)と音程は異なるものである。2:3:4 は二和音のヴォイシングであり音程とは言えず、2/1 はオクターブという音程だが二和音とは言えない。)
この定義により全ての{{en仮リンク|monad}}(ユニゾンやオクターブユニゾン)と{{en仮リンク|二和音|dyad}}はambitonalである。(二和音(ダイアド)と音程は異なるものである。2:3:4 は二和音のヴォイシングであり音程とは言えず、2/1 はオクターブという音程だが二和音とは言えない。)


なので音程の命名に使われるharmonic/subharmonicはotonal/utonalと同じやり方で扱ってはいけない。例えば 43/32 は"prime harmonic fourth"と命名されている(43倍音を単音程化したものだから)のだが、これを二和音と見ようとするならそのヴォイシングの 32:43:64 を考えると 64/43 "prime subharmonic fifth"と区別がつかなくなってしまいどちらがotonalだとか言うことができなくなる。そして実際にこの音程を二和音と考えるならそれがharmonicかsubharmonicかはそのヴォイシングを踏まえて考える必要がある。
なので音程の命名に使われるharmonic/subharmonicはotonal/utonalと同じやり方で扱ってはいけない。例えば 43/32 は"prime harmonic fourth"と命名されている(43倍音を単音程化したものだから)のだが、これを二和音と見ようとするならそのヴォイシングの 32:43:64 を考えると 64/43 "prime subharmonic fifth"と区別がつかなくなってしまいどちらがotonalだとか言うことができなくなる。そして実際にこの音程を二和音と考えるならそれがharmonicかsubharmonicかはそのヴォイシングを踏まえて考える必要がある。


(中略)
(中略)
=== Ambitonal chord theorem ===
JIコードが、GCDが 1 となる整数の集合として表されているとする。(この段落では一般的な性質を述べているので、全奇数化についてはふれていない。というかこの議論をオクターブ等価性抜きで理解してもそれはそれで成立する。)このコードのinverseは LCM(元のコード)/(元のコードの各音) を集めた集合となる。
あるコードがambitonalであるとする。ということはコードの最大の整数 max(chord) と、コードのinverseの最大の整数つまり LCM(chord)/min(chord) が等しくなるので、min(chord)*max(chord) = LCM(chord) となる。逆にGCDが 1 となる整数の集合がこの式を満たせば、それはambitonal chordとなる。
従って、素数でない奇数を ''N'' とし(素数でもいいのだが二和音以下になるので自明)、''N'' の約数の部分集合の全てのパターンを考えることでLCMが ''N'' となる全てのambitonal chordを見つけることができる。取り出した約数が3個以上(2個以下なら二和音以下なので自明)だとして、その部分集合のGCDが 1、LCMが ''N''、そして min(subset)*max(subset) = ''N'' ならばambitonal chordとなる。部分集合に 1 と ''N'' が含まれるなら必ずambitonalになるが、それ以外にもambitonalとなる部分集合があり得る。
(例略)


=== スケール ===
=== スケール ===
これらの定義をJIコードと同様にJIスケールに適用することができる。例えば、Ptolemy–Zarlinoの伝統的な純正律スケール 1/1-9/8-5/4-4/3-3/2-5/3-15/8-2/1 は簡約すると {1, 3, 5, 9, 15, 27, 45} になる。John Redfieldが作成したdiatonicスケール<ref>[[:en:John H. Chalmers]], Divisions of the Tetrachord (1993), p. 106. (短調向けの左手型Zarlinoと同じもの)</ref>は 1/1-10/9-5/4-4/3-3/2-5/3-15/8-2/1 で、簡約すると{3, 5, 9, 15, 27, 45, 135} になる。これらは互いにinverseであり、Zarlino diatonicはotonalであり、Redfield diatonicはutonalである。このようなやり方で、いくつかのスケール種別が特定の性質を持つことがわかる。例えば、{{en仮リンク|Euler–Fokker genus}}、{{en仮リンク|組み合わせ積集合|Combination product sets}}{{en仮リンク|調性ダイヤモンド|Tonality diamond}}は必然的にambitonalになり、{{en仮リンク|dwarf}} scaleはotonalかambitonalになる。
これらの定義をJIコードと同様にJIスケールに適用することができる。例えば、Ptolemy–Zarlinoの伝統的な純正律スケール 1/1-9/8-5/4-4/3-3/2-5/3-15/8-2/1 は簡約すると {1, 3, 5, 9, 15, 27, 45} になる。John Redfieldが作成したdiatonicスケール<ref>[[:en:John H. Chalmers]], ''Divisions of the Tetrachord'' (1993), p. 106. (短調向けの左手型Zarlinoと同じもの)</ref>は 1/1-10/9-5/4-4/3-3/2-5/3-15/8-2/1 で、簡約すると {3, 5, 9, 15, 27, 45, 135} になる。これらは互いにinverseであり、Zarlino diatonicはotonalであり、Redfield diatonicはutonalである。このようなやり方で、いくつかのスケール種別が特定の性質を持つことがわかる。例えば、{{en仮リンク|Euler–Fokker genus}}、{{en仮リンク|組み合わせ積集合|Combination product sets}}のうち ''n'' = 2''k'' のもの、{{en仮リンク|調性ダイヤモンド|Tonality diamond}}は必然的にambitonalになり、{{en仮リンク|dwarf}} scaleはotonalかambitonalになる。


(後略)
(後略)