スーパーパーティキュラー
数学におけるスーパーパーティキュラー (英: superparticular ratio, epimoric ratio) は、連続する2つの整数による比または分数(隣接整数比)で、1より大きいものである。
次のような形をとる:
- [math]\frac{n + 1}{n} = 1 + \frac{1}{n}[/math]
ここで [math]n[/math] は正整数。ただし 2/1 (n=1) を含まないという流儀もあり、必要なら都度定義するのがよい。
スーパーパーティキュラーは純正律に頻出する。倍音列の連続する2音はスーパーパーティキュラー音程となる。例えば第20倍音と第21倍音は 21/20 だけ隔たっている。上のほうに行くほど倍音の間隔(周波数の差ではなく比として)は狭まっていくので、スーパーパーティキュラー比も小さくなっていく。このため、スーパーパーティキュラーを調べることは整数比調律システムの中の簡単かつ小さい音程について調べることを意味する。実に、全てではないが多くのコンマがスーパーパーティキュラーとなっている。
既約で分母と分子の差が2以上の分数をsuperpartient ratioという。
分母と分子の差を一般化する用語が提案されている。デルタ-N 比 (en) は分子が分母より N だけ大きい比である。なのでデルタ1比はスーパーパーティキュラーを意味する。
語源
superparticularという単語はラテン語から来ていて、"above by one part"(1パーツ分だけ超過している)という意味になる。相当するギリシャ語由来の単語はepimoric (希: επιμοριος, epimórios) である。
定義
古代ギリシャから19世紀頃まで、superparticularは2数の関係を表す用語だった。"When one number contains the whole of another in itself, and some part of it besides, it is called superparticular."[1](2数をAとBと呼ぶことにして、AがBを丸ごと含み、さらにBの等分したものを1個加えたものである場合、AはBのsuperparticularと呼ばれる。) 現代では、"... is superparticular"という表現はひとつの分数または比(または純正音程)に対して使われる。古い定義での2数を分数にして約分すると、新しい定義のsuperparticular ratioが得られる。言い換えると、分数がスーパーパーティキュラーであるとは、約分されていることを前提として、分子を分母で割り算すると1余り1になるということである。
ほぼすべての場合で古い定義から作った比と新しい定義([math]\frac{n + 1}{n}[/math]、ここで [math]n[/math] は正整数)は一致する。2/1 の場合だけ食い違いを見せる。伝統的ギリシャ算術によると、2/1 は比というより倍数である。割り算も2余り0となる。この視点によれば倍数とスーパーパーティキュラーは重なりのないカテゴリーと考えることができる。音楽の言葉で言えば、2/1 は基本周波数の整数倍の音程であり、その他のスーパーパーティキュラーはそうではないことを定義において考慮したらどうかということである。
性質
スーパーパーティキュラーの性質を以下に示す。
- スーパーパーティキュラー音程の2音による差音がミッシング・ファンダメンタルと一致する。
- スーパーパーティキュラー音程の最初の6個(3/2, 4/3, 5/4, 6/5, 7/6, 8/7)はハーモニックエントロピー (en) の重要な極小点となる。
- 2個の連続するスーパーパーティキュラーの差(除算)は必ずスーパーパーティキュラーになる。→平方スーパーパーティキュラー (en)
- 2個の連続するスーパーパーティキュラーの積み重ね(乗算)は約分されてスーパーパーティキュラーになるか、そうでなければデルタ2比になる。
- スーパーパーティキュラーは2個のスーパーパーティキュラーの積にすることができる。
- [math]\frac{n+1}{n} = \frac{2n+1}{2n}\times\frac{2n+2}{2n+1}[/math] である。例えば [math]\frac{9}{8} \times \frac{10}{9} = \frac{10}{8} = \frac{5 \times 2}{4 \times 2} = \frac{5}{4}[/math] となる。(任意の項数に一般化できるのも明らか)
- ほかの例として [math]\frac{12}{11} \times \frac{33}{32} = \frac{396}{352} = \frac{9 \times 44}{8 \times 44} = \frac{9}{8}[/math](4分割して小さいほうの3個をまとめて約分しただけともいう)
- ファレイ数列の連続する2項を a/b と c/d とすると、それは a/b < c/d かつ bc - ad = 1 ということでもあるのだが、ゆえに (c/d)/(a/b) = bc/ad はスーパーパーティキュラーとなる。
- Størmerの定理によると、それぞれのリミットにおいてスーパーパーティキュラーは有限個しかない。
一般化
Taylorは一般化した用語について記述している。
- (実のところ n の値ひとつづつに対応した用語があるのだが省略)
- superbipartient (or odd-particulars) 分子割る分母が1余り2である、つまりデルタ2比のうち 5/3 以降が該当する。
- supertripartient (or throdd-particulars) 分子割る分母が1余り3である、つまりデルタ3比のうち 7/4 以降が該当する。
- multiple superparticular 分子割る分母がm余り1である。m=2 の時duple、m=3 の時triple、…[2]
"メタ"な方向の一般化により、平方スーパーパーティキュラーとウルトラパーティキュラーが生まれた。隣接する整数の間の比としてスーパーパーティキュラーがあり、隣接するスーパーパーティキュラーの間の比を取ると平方スーパーパーティキュラーになり、隣接する平方スーパーパーティキュラーの間の比がウルトラパーティキュラーと命名された。これにより多くの既知のコンマを含む無数のコンマファミリーに対する説明ができるようになる。 A notable property is that just as "all superpartient ratios can be constructed as products of [consecutive] superparticular numbers", all ratios between two superparticular intervals (e.g (8/7)/(11/10) = 80/77) can be constructed as a product of consecutive square superparticular numbers (e.g 64/63 * 81/80 * 100/99 = S8 * S9 * S10), for the same algebraic reason as in the corresponding case of superpartient ratios. (There is a corresponding analogy with ultraparticulars too, for the same reason.)
(除算の方向をそろえるために1行目を単位分数にしてある) unit fraction (= one part) 1/1 1/2 1/3 1/4 1/5 1/6 1/7 superparticular 2/1 3/2 4/3 5/4 6/5 7/6 square superparticular 4/3 9/8 16/15 25/24 36/35 ultraparticular 32/27 135/128 128/125 875/864
関連項目
脚注
- ↑ Taylor, Thomas (1816), Theoretic Arithmetic, in Three Books, p. 37
- ↑ Taylor, Thomas (1816), Theoretic Arithmetic, in Three Books, p. 45-50
外部リンク
- Generalisation of the terms "epimoric" and "superparticular" as applied to ratios on the Sagittal forum