テンパーアウト
テンパーアウト(tempering out)はレギュラーテンペラメント(ランク1の平均律も含む)がコンマのような小さい音程に行う何かである: それを消す(disappear、vanish)。
概要
音を周波数比で表すとして、それを消すということは、それを 1/1 と同じものにするということである。1/1 を掛けても何も変わらない。音をセントで表すなら、それを 0 セントにするということである。0 セントを足しても何も変わらない。
どちらの場合でも、それをするには我々のチューニングになにがしかの誤差を導入するということを意味する。例えば 3 を使いたい場合に代わりにわずかに大きいまたは小さい 3 を使う。どの素数にも誤差を導入することができ、コンマをひとつだけテンパーアウトするのなら任意の素数を選んで誤差なしにできる。実際、多くの人は純粋なオクターブを得るために 2 を誤差なしにする。オクターブをテンパーする方針のチューニング方法もある。TOP tuning (en) など。
Tempering together
複数のコードや音程がtempered toghetherされるというのは、それらの対応するステップの間の差(コンマ)が全てテンパーアウトされることをいう。もし2つのコードがtempered togetherされると、そのテンペラメント上で両方のコードの表現(コードを構成するテンパーされた音程の一揃い)が同一になる。
例えば、81/80 をテンパーアウトするミーントーンにおいて、54:64:81 (with steps 32/27, 81/64) と 10:12:15 (with steps 6/5, 5/4) がtempered togetherされる。なぜなら [math]\displaystyle{ \textstyle\frac{32}{27}\cdot\frac{81}{80} = \frac{6}{5} }[/math] かつ [math]\displaystyle{ \textstyle\frac{81}{64} = \frac{5}{4}\cdot\frac{81}{80} }[/math]だから、つまり 81/80 を 1/1 にするということは 32/27 と 6/5 を同じに、81/64 と 5/4 を同じにすることも意味するからである。
例
シントニックコンマ(81/80)は [math]\displaystyle{ \textstyle\frac{3^4}{2^4 \times 5} }[/math] または、モンゾで書くと [-4 4 -1⟩ となる。
19平均律(パテントヴァル)は 81/80 をテンパーアウトする。これを何通りかの方法で見てみよう:
1. ヴァルのステップを数える
81/80 には 5 より大きい素因数は含まれていないので、これは5リミットのコンマのひとつである。19edoの5リミットのパテントヴァルは ⟨19 30 44] である。これは19edoの 19 ステップで 2/1 を得、30 ステップが 3/1 に一番近いのでそれを採用し、44 ステップが 5/1 に一番近いのでそれを採用する、という意味である。
注意、19平均律に「ストレッチ」等の但し書きがないのでedoだとみなす。そのため、19 ステップは正確に 2/1 となるが、19edoの 30 ステップは 3/1 を近似しているだけである。5/1 も同様。これが素数に誤差が導入される場面である。心配いりません、これはとても便利な誤差です。
81 は 3×3×3×3 であるが、19edoの 30 + 30 + 30 + 30 = 120 ステップでもある。
80 は 5×2×2×2×2 であるが、19edoの 44 + 19 + 19 + 19 + 19 = 120 ステップでもある。
81/80 は 81 倍のためのステップ数分だけ上がって、80 倍のためのステップ数分だけ下がることになる。120 ステップ − 120 ステップ = 0 ステップ。
モンゾにヴァルを適用するのはもっと簡単である。モンゾの最初の数値(コンマに含まれている 2/1 の個数(符号付き重複度))掛けるヴァルの最初の数値(2/1 を構成するのに必要なステップ数)、足す、モンゾの2番目の数値掛けるヴァルの2番目の数値、足す、3番目掛ける3番目、である: (−4 × 19) + (4 × 30) + (−1 × 44) = 0 ステップ。
なので、19平均律において 81/80 を任意の音程に加える(掛ける)ことは19edoの 0 ステップを加えることで、つまり 81/80 はテンパーアウトされている。
2. 骨折り計算
我々は19edoの 30 ステップが 3/1 になると言っているが、上記の通り、誤りである。19edoの1ステップは 2 の19乗根、およそ 1.037155である。(63.157895 セント。)これを 19 回掛けると正確に 2 になる。しかしこれを 30 回掛けても 3 にはならず 2.987518 になる。同様に、44 回掛けても 5 ではなく 4.97877 になる。
これらの値を 81/80 に使ってみると、81/80 がテンパーアウトされることがわかる:
81/80 = 3*3*3*3 / 5*2*2*2*2 = (3^4) / (5)*(2^4). // 素因数分解して含まれている3や5を明らかに (2.987518 ^ 4) / (4.97877)*(2^4) = 79.660326 / (4.97877 * 16) = 79.660326 / 79.660326 = 1/1 // (2^(30/19)^4) / (2^(44/19))*(2^(19/19)^4) であることがわかっていればヴァルのステップを数えるのと全く同じで、浮動小数点数の精度とか気にせずに計算できるのだが、実用上はこれで何とかなることは多い
See also
- Fudging – or virtual tempering