マップされた音程
マップされた音程とはマッピング行列により写像された音程のこと。
マップ前の音程として純正音程の 10/9 を例とする。このモンゾ(素数計数ベクトル)は [math]\displaystyle{ \textbf{i} = }[/math] [1 -2 1⟩ となる。これをミーントーン [⟨1 1 0], ⟨0 1 4]] でマップする(~10/9 と書く; 後述)と、テンパードモンゾ(ジェネレーター計数ベクトル)になり [math]\displaystyle{ \textbf{y} = }[/math] [⟨1 1 0], ⟨0 1 4]][1 -2 1⟩ = [-1 2⟩ となる。
なお [math]\displaystyle{ \textbf{i} }[/math] はintervalのi、[math]\displaystyle{ \textbf{y} }[/math] はiに似たものなどの意図を込めている。
次に 9/8 を例とすると、このモンゾは [-3 2 0⟩ となる。これをミーントーンでマップする(~9/8 と書く)と、テンパードモンゾになり [⟨1 1 0], ⟨0 1 4]][-3 2 0⟩ = [-1 2⟩ となる。先ほどの ~10/9 のテンパードモンゾと一致した。これはミーントーンにおいて 10/9 と 9/8 がtempered togetherされるからである。
純正音程にチルダを前置して ~10/9 のように書くとその音程を問題のテンペラメントでマップした音程を表す。どのテンペラメントなのかは文脈で明らかでなければならない。また、tempered togetherされて同じ音程にマップされることを 10/9~9/8 のように書く。そのセント値を示すなどの時は ~10/9 ≈ xx ¢ や組み合わせて ~10/9~9/8 ≈ xx ¢ と書く。
基本的に、無限の純正音程が1つの音程にマップされる。1つのマップされた音程は特定の純正音程を指すのではなく同値類(equivalence class)の一つを指す。同値類はそのテンペラメントのコンマを介してtempered togetherされるすべての純正音程を同じものとみなす。つまり、レギュラーテンペラメントはベクトル空間における剰余演算のようなものである。100/81、5/4、81/64、6561/5120、…が 81/80 を法として特定の同値類をなす。
テンパードモンゾ
テンパードモンゾ(tempered monzo, tmonzo)、あるいはジェネレーター計数ベクトルとは、テンペラメントのジェネレーター基底をいくつずつ使うかを示すことでテンパーされた音程を表すベクトルである。その次元はテンペラメントのランクと一致する。これを音程の表記とするにはテンペラメントが明らかになっているだけでは不十分で、テンペラメントのジェネレーター基底を明示しなければならない。上の例の [-1 2⟩ はジェネレーターがオクターブと完全5度、つまり ~2 と ~3/2 である。この基底を明示して ~2.~3/2 [-1 2⟩ や P8.P5 [-1 2⟩ と書く。ジェネレーター基底がオクターブと完全12度なら同じ音程が ~2.~3 [-3 2⟩ や P8.P12 [-3 2⟩ と書かれることになる。これらの間の変換はジェネレーター読み替え操作を参照のこと。(上の例の同じテンパードモンゾだからtempered togetherだという議論では、同じマッピング行列を掛けているので同じジェネレーター基底だということは明らかなのでジェネレーター基底を書き出さずとも同一性判定を行えるのであった。)
用語
対応関係の詳細に触れずにマッピングの出力全体(値域)を指すには「テンペラメントの音程」でよい。マッピングの入力全体(定義域)は純正律サブグループ等と書く。(写像元(もと)から写像先へなどと書きたくなるところだが、群の各要素を元(げん)と書くので避けている。)
「マップされた音程」は「テンパーされた音程」とも呼べるが、「テンパーされた音程」では曖昧な面がある。「テンパーされた音程」では最終的なチューニングでの音程のサイズを元の純正音程のそれと比較する話かもしれない。「マップされた音程」ならマッピング行列の話だと明確になる。