「レギュラーテンペラメントとランクrテンペラメント」の版間の差分
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レギュラーテンペラメントは音律同士の{{w|群準同型|群準同型}}である。ここでいう音律はある音程によって生成されるアーベル群を言う。定義域は大抵の場合[[純正律部分群]]で、値域は[[マップされた音程|テンパーされた音程]]のなす空間とされる。テンパーは恣意的な写像を用いて一つ以上のコンマを単位元であるユニゾンと同一視することであり、[[テンパーアウト]]は音程がユニゾンによって同一視されている状態を言う。そして、テンパーによって2つの異なる音程が同じテンパーされた音程に同一視されることがあり、これを''tempered together''<sup>[定訳なし]</sup>という。 | |||
レギュラーテンペラメントの大きな有用性としては、同一視される音程を増やすことによって、ある種の多義性(ポリセミー)を与えることにある。例えば12平均律のサブセットであるホールトーンスケールが2つのaugコードの合成、全音の堆積と言った文脈で扱えるのは、[[12平均律]]が[[ピタゴラスコンマ]]と[[ディエシス]]を同時にテンパーしていることによって成立していると考えることができる。 | |||
7-limit純正律の音程は7までの素因数の軸で表される4次元で考えられ、全ての音程は4次元座標で扱われる。何かしらコンマがテンパーアウトされることにより次元が減らされ、値域の元における全ての音程は1~3次元座標で扱われる。テンパー後の次元数はテンパーアウトされたコンマの数に依存する。そしてテンペラメントのランクはテンパー後の音律の次元数に等しい。 | |||
具体例として、[[セプティマルミーントーン]]テンペラメントを関数 M: J→K とすると、M(6/5) = M(32/27) = "短三度" である。2つの純正音程の差(周波数比)である 81/80([[シントニックコンマ]])はテンパーアウトされている。すなわち M(81/80) = M(1/1) = "ユニゾン" である。 | |||
各レギュラーテンペラメントは音律同士の関係性を扱う抽象的な構造で、特定の音律について論じるものではない。任意のテンペラメントで音律の最適性を求めることはできる一方で、最適性の尺度は多く存在している。そのため、各テンペラメントには調律可能な範囲([[ジェネレーターとピリオド|ジェネレーター]]のサイズの範囲で示される)がある、というように取り扱うことが多い。ジェネレーターを有する音律が与えられると、任意のテンパーされた音程はジェネレーターの整数係数線形結合として計算できる。この性質がテンペラメントをレギュラーたらしめている。 | |||
== 次元数、またはランク == | == 次元数、またはランク == | ||
2026年6月10日 (水) 14:30時点における版
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レギュラーテンペラメントは音律同士の群準同型である。ここでいう音律はある音程によって生成されるアーベル群を言う。定義域は大抵の場合純正律部分群で、値域はテンパーされた音程のなす空間とされる。テンパーは恣意的な写像を用いて一つ以上のコンマを単位元であるユニゾンと同一視することであり、テンパーアウトは音程がユニゾンによって同一視されている状態を言う。そして、テンパーによって2つの異なる音程が同じテンパーされた音程に同一視されることがあり、これをtempered together[定訳なし]という。
レギュラーテンペラメントの大きな有用性としては、同一視される音程を増やすことによって、ある種の多義性(ポリセミー)を与えることにある。例えば12平均律のサブセットであるホールトーンスケールが2つのaugコードの合成、全音の堆積と言った文脈で扱えるのは、12平均律がピタゴラスコンマとディエシスを同時にテンパーしていることによって成立していると考えることができる。
7-limit純正律の音程は7までの素因数の軸で表される4次元で考えられ、全ての音程は4次元座標で扱われる。何かしらコンマがテンパーアウトされることにより次元が減らされ、値域の元における全ての音程は1~3次元座標で扱われる。テンパー後の次元数はテンパーアウトされたコンマの数に依存する。そしてテンペラメントのランクはテンパー後の音律の次元数に等しい。
具体例として、セプティマルミーントーンテンペラメントを関数 M: J→K とすると、M(6/5) = M(32/27) = "短三度" である。2つの純正音程の差(周波数比)である 81/80(シントニックコンマ)はテンパーアウトされている。すなわち M(81/80) = M(1/1) = "ユニゾン" である。
各レギュラーテンペラメントは音律同士の関係性を扱う抽象的な構造で、特定の音律について論じるものではない。任意のテンペラメントで音律の最適性を求めることはできる一方で、最適性の尺度は多く存在している。そのため、各テンペラメントには調律可能な範囲(ジェネレーターのサイズの範囲で示される)がある、というように取り扱うことが多い。ジェネレーターを有する音律が与えられると、任意のテンパーされた音程はジェネレーターの整数係数線形結合として計算できる。この性質がテンペラメントをレギュラーたらしめている。
次元数、またはランク
特定の調律(つまり周波数比決定済み)におけるランク-r レギュラーテンペラメントはおそらく、与えられた r 個の乗法的に独立した実数により定義されるだろう。それら実数を掛け合わせることでそのテンペラメントの音程が生成できる。ランク-r テンペラメントは r 個のジェネレーターにより定義され、従って r 行(個)のヴァルである。抽象的レギュラーテンペラメントは、様々な方法により定義される。例えば、テンペラメントにおけるテンパーアウトされるコンマのセットで与えることで定義されたり、テンペラメントのマッピングを定義する r 行のヴァルを与えるというやり方だったりする。テンパーアウトされたコンマをもつテンペラメントの特徴は、コンマポンプである。和声的に関連する音符やコードのシーケンスにより、開始地点に戻る。それらは純正律では不可能なことである。例としては、ミーントーンテンペラメントの I-vii-IV-ii-V-I である。
ランク1テンペラメント (平均律)
平均律 (ET or tET) と オクターブの均等な分割 (edo or ed2) は似た概念であるが、用語の使われ方が異なる。p-リミット平均律は、単純にジェネレーターが1種類しかない p-リミットテンペラメント、つまりランク1テンペラメントであって、p-リミット純正音程を1次元座標を用いてマップする。このようにETという用語はオクターブなど何らかの音程を等分割するということに縛られず、実際に純オクターブを等分割するものではないETが多数開発されている。他方で、n-edoは、オクターブを n 個に等分したものであって、純正音程からのマッピングを考慮していないものである。edoはマッピングの出力に位置づけることでETとして扱える。それは典型的にはedoに支持(広義)されるテンペラメントのヴァルを使ってであるが、おもしろい結果を得るためにそれ以外のヴァルを使うこともできる。慣れ親しんだ12平均律(edoとETを区別せずこのように呼ぶこととする)は完全5度(約 701.955 セント)のサイズをピタゴラスコンマの 1/12 だけ短縮することによって 700.0 セントの5度を得る。ほかにも12etに支持(狭義?)されるテンペラメントがある。
ランク2テンペラメント
p-リミットランク2テンペラメントは p-リミット純正律のすべての音程を2次元座標を用いてマップする。このためランク2テンペラメントは2種類のジェネレーターを有している。ジェネレーターの大きさは問わない。つまりランク2テンペラメントは 2 行のヴァルからなるマッピングで定義される。それぞれのヴァルがそれぞれのジェネレーターに対応する。大きいほうの(または1番目の)ジェネレーターはピリオド(周期)と呼ばれ(なのでこのマッピングはperiod-generator mappingとも呼ばれる)、ピリオドはたいていオクターブかその整数分の1となる。ピリオドがオクターブの場合はlinear temperamentと呼ばれる。ランク2テンペラメントは追加でコンマをテンパーアウトすることによって関係する(それを支持(狭義)する)ランク1テンペラメントにすることができる。例えば、5リミットミーントーンテンペラメントはランク2であり(3次元である5リミット純正律から 81/80 をテンパーアウトしたものであり)、追加でピタゴラスコンマをテンパーアウトすることで12etとなる。(RTTに基づきどういうETになるかというのを脇に置いて、ジェネレーターの大きさをEDOに合わせることでそのEDOで演奏できるようになることを指してEDO tuningという言い方をされることもある。)
ランク2とランク3のレギュラーテンペラメントがOptimal patent val (en) にカタログ化されている。ランク2テンペラメントはマッピングに基づいてProposed names for rank 2 temperaments (en) に、ジェネレーターのサイズに基づいてMap of rank-2 temperaments (en) にリスト化されている。pergen (en) も参考のこと。Graham Breed (en) のgiant list of regular temperamentsもある。
レギュラーテンペラメントの特徴づけ
Normal val lists
ヴァルのリストが与えられた場合、それをsaturate(マッピングの約分みたいなもの。これができていないとマッピングで出力される音程に対してジェネレーターによる格子が無駄に細かくなり全射ではなくなる)し、エルミート標準形を使って整理しnormal val listにする場合がある。これは抽象的テンペラメントを規範的に表現する。各ヴァルを有理数の音程に適用(慣れていればマッピングとモンゾの行列演算)するとテンペラメントの音程全体を表すアーベル群の要素1つ(つまりテンペラメントの音程)が得られる。例えば、7リミットミラクルを表すマッピングは [⟨1 1 3 3], ⟨0 6 -7 -2]] であり、これを 16/15 または 15/14 に適用すると [0 1] (2番目のジェネレーター1個)というテンパード音程になる。
Normal comma lists
normal comma listによって抽象的テンペラメントが定義される。この方法はnormal val listより明確にテンペラメントの家族関係を示すという利点がある。normal val list以外の方法でテンペラメントを表しテンペラメントの音程を定義することができるということである。
テンパーアウトするコンマのリストでテンペラメントを表す場合、リストはval listと同様にsaturate (defactoring) しておくほうが良い。
Wedgie
この手法は外積代数を用いて、抽象的テンペラメントと一意に関連付けられるくさび積を定義する。テンペラメントの音程からなる群は、wedgieとモンゾの内積によって得られる。
例えば、"∨" を内積を表す記号として、7リミットミラクルを表すwedgieは W = ⟨⟨6 -7 -2 -25 -20 15]] と書ける。内積 W ∨ [1 0 0 0⟩ は ⟨0 -6 7 2] となり(1番目のジェネレーターを入れると2番目のジェネレーターのヴァルが出てくる)、15/14 ならば W ∨ [-1 1 1 -1⟩ は ⟨1 1 3 3] となり、16/15 ならば W ∨ [4 -1 -1 0⟩ だがこれもまた ⟨1 1 3 3] となる(2番目のジェネレーターを入れると1番目のジェネレーターのヴァルが出てくる)。ランク1テンペラメントのように説明すると、⟨1 1 3 3] はミラクルのコンマをテンパーアウトしたのに加えて 15/14 (~16/15) もユニゾンにしてしまった7リミット1etである。内積はmultivalにコンマを追加しランクを1下げる効果がある。
Frobenius projection matrix
Projection matrixはランクを落としつつ元のJI空間(指数に非整数も許したもの(分数モンゾ (en) ))に写像する行列である。これ自体は一意性はないが、ムーア・ペンローズ逆行列を使うなどすることで抽象的テンペラメントごとに一意のFrobenius projection matrixが得られる。これはまたFrobenius tuningを導く。
(後略)