レギュラーテンペラメントとランクrテンペラメント
| これは上級者向けページです。 経験豊富な読者がトピックの進んだ部分を学べるように書かれています。 対応する初心者向けページは レギュラーテンペラメント です。 |
レギュラーテンペラメントは対象の(純正)音程のアーベル群からテンパーされた音程のアーベル群への準同型写像である。典型的には、定義域は有理数の乗法的部分群である(aka p-limit JI)。テンパーは、故意にチューニングを変更することによってコンマ、またはコンマのセットが「消され」、ユニゾンになること(テンパーアウトという)によって実行される。レギュラーテンペラメントの有用性の一部は、音階を生成することである。その音階は、厳密な純正律に比べ簡略であり、協和する音程を多く持ちつつ、高いレベルの協和、または純正律の近似を維持する。そして他の一部は、コンマをテンパーアウトするものとして利用できる「語呂合わせ」を導入することである。テンペラメントは効果的に純正律の次元を減らす。それによりピッチ間の関係性をより簡略化するのである。
数学的に言うと、レギュラーテンペラメントは定義域を近似したいJI等とし、値域をテンパーされた音程(簡易的にテンペラメントの音程とも呼ばれる)の集合とする関数である。一般的にはこの写像は多対一である。2つの異なる有理数が同じテンパーされた音程に写像されることがある。これをtempered together[定訳なし]という。
例えば、7リミット純正調のピッチ間の関係性は、7 までの素数(2, 3, 5, 7)の軸で表される4次元で考えることができ、全ての音程は4次元座標で位置づけられる。7リミットレギュラーテンペラメントにおいて、しかしながら、どうにかして次元は減少される。それはテンパーアウトされるコンマに依存する。そして音程はうまく調整され1, 2または3次元の座標で位置づけられる。次元数の減少はテンパーアウトされたコンマの数に依存する。テンパー後の次元数がテンペラメントのランクである。
具体例として、7リミットミーントーンテンペラメントを関数 M とすると、M(6/5) = M(32/27) = "minor third" である。2つの純正音程の差(周波数比)である 81/80(シントニックコンマ)はテンパーアウトされている。すなわち M(81/80) = M(1/1) = "unison" である。
各レギュラーテンペラメントは抽象的なもので、特定のチューニングを決定してしまうものではない。任意のテンペラメントの最適なチューニングを計算で求めることができるが、最適性の尺度はいくつも存在していてそれぞれチューニング結果も異なることになる。そのため、各テンペラメントにはチューニング可能な範囲(ジェネレーターのサイズの範囲で示される)がある、というように取り扱うことが多い。ジェネレーターのチューニングが与えられると、任意のテンパーされた音程はジェネレーターの整数係数線形結合として計算できる。この性質がテンペラメントをレギュラーたらしめている。
次元数、またはランク
特定の調律(つまり周波数比決定済み)におけるランク-r レギュラーテンペラメントはおそらく、与えられた r 個の乗法的に独立した実数により定義されるだろう。それら実数を掛け合わせることでそのテンペラメントの音程が生成できる。ランク-r テンペラメントは r 個のジェネレーターにより定義され、従って r 行(個)のヴァルである。抽象的レギュラーテンペラメントは、様々な方法により定義される。例えば、テンペラメントにおけるテンパーアウトされるコンマのセットで与えることで定義されたり、テンペラメントのマッピングを定義する r 行のヴァルを与えるというやり方だったりする。テンパーアウトされたコンマをもつテンペラメントの特徴は、コンマポンプである。和声的に関連する音符やコードのシーケンスにより、開始地点に戻る。それらは純正律では不可能なことである。例としては、ミーントーンテンペラメントの I-vii-IV-ii-V-I である。
ランク1テンペラメント (平均律)
平均律 (ET or tET) と オクターブの均等な分割 (edo or ed2) は似た概念であるが、用語の使われ方が異なる。p-リミット平均律は、単純にジェネレーターが1種類しかない p-リミットテンペラメント、つまりランク1テンペラメントであって、p-リミット純正音程を1次元座標を用いてマップする。このようにETという用語はオクターブなど何らかの音程を等分割するということに縛られず、実際に純オクターブを等分割するものではないETが多数開発されている。他方で、n-edoは、オクターブを n 個に等分したものであって、純正音程からのマッピングを考慮していないものである。edoはマッピングの出力に位置づけることでETとして扱える。それは典型的にはedoに支持(広義)されるテンペラメントのヴァルを使ってであるが、おもしろい結果を得るためにそれ以外のヴァルを使うこともできる。慣れ親しんだ12平均律(edoとETを区別せずこのように呼ぶこととする)は完全5度(約 701.955 セント)のサイズをピタゴラスコンマの 1/12 だけ短縮することによって 700.0 セントの5度を得る。ほかにも12etに支持(狭義?)されるテンペラメントがある。
ランク2テンペラメント
p-リミットランク2テンペラメントは p-リミット純正律のすべての音程を2次元座標を用いてマップする。このためランク2テンペラメントは2種類のジェネレーターを有している。ジェネレーターの大きさは問わない。つまりランク2テンペラメントは 2 行のヴァルからなるマッピングで定義される。それぞれのヴァルがそれぞれのジェネレーターに対応する。大きいほうの(または1番目の)ジェネレーターはピリオド(周期)と呼ばれ(なのでこのマッピングはperiod-generator mappingとも呼ばれる)、ピリオドはたいていオクターブかその整数分の1となる。ピリオドがオクターブの場合はlinear temperamentと呼ばれる。ランク2テンペラメントは追加でコンマをテンパーアウトすることによって関係する(それを支持(狭義)する)ランク1テンペラメントにすることができる。例えば、5リミットミーントーンテンペラメントはランク2であり(3次元である5リミット純正律から 81/80 をテンパーアウトしたものであり)、追加でピタゴラスコンマをテンパーアウトすることで12etとなる。(RTTに基づきどういうETになるかというのを脇に置いて、ジェネレーターの大きさをEDOに合わせることでそのEDOで演奏できるようになることを指してEDO tuningという言い方をされることもある。)
ランク2とランク3のレギュラーテンペラメントがOptimal patent val (en) にカタログ化されている。ランク2テンペラメントはマッピングに基づいてProposed names for rank 2 temperaments (en) に、ジェネレーターのサイズに基づいてMap of rank-2 temperaments (en) にリスト化されている。pergen (en) も参考のこと。Graham Breed (en) のgiant list of regular temperamentsもある。
レギュラーテンペラメントの特徴づけ
Normal val lists
ヴァルのリストが与えられた場合、それをsaturate(マッピングの約分みたいなもの。これができていないとマッピングで出力される音程に対してジェネレーターによる格子が無駄に細かくなり全射ではなくなる)し、エルミート標準形を使って整理しnormal val listにする場合がある。これは抽象的テンペラメントを規範的に表現する。各ヴァルを有理数の音程に適用(慣れていればマッピングとモンゾの行列演算)するとテンペラメントの音程全体を表すアーベル群の要素1つ(つまりテンペラメントの音程)が得られる。例えば、7リミットミラクルを表すマッピングは [⟨1 1 3 3], ⟨0 6 -7 -2]] であり、これを 16/15 または 15/14 に適用すると [0 1] (2番目のジェネレーター1個)というテンパード音程になる。
Normal comma lists
normal comma listによって抽象的テンペラメントが定義される。この方法はnormal val listより明確にテンペラメントの家族関係を示すという利点がある。normal val list以外の方法でテンペラメントを表しテンペラメントの音程を定義することができるということである。
テンパーアウトするコンマのリストでテンペラメントを表す場合、リストはval listと同様にsaturate (defactoring) しておくほうが良い。
Wedgie
この手法は外積代数を用いて、抽象的テンペラメントと一意に関連付けられるくさび積を定義する。テンペラメントの音程からなる群は、wedgieとモンゾの内積によって得られる。
例えば、"∨" を内積を表す記号として、7リミットミラクルを表すwedgieは W = ⟨⟨6 -7 -2 -25 -20 15]] と書ける。内積 W ∨ [1 0 0 0⟩ は ⟨0 -6 7 2] となり(1番目のジェネレーターを入れると2番目のジェネレーターのヴァルが出てくる)、15/14 ならば W ∨ [-1 1 1 -1⟩ は ⟨1 1 3 3] となり、16/15 ならば W ∨ [4 -1 -1 0⟩ だがこれもまた ⟨1 1 3 3] となる(2番目のジェネレーターを入れると1番目のジェネレーターのヴァルが出てくる)。ランク1テンペラメントのように説明すると、⟨1 1 3 3] はミラクルのコンマをテンパーアウトしたのに加えて 15/14 (~16/15) もユニゾンにしてしまった7リミット1etである。内積はmultivalにコンマを追加しランクを1下げる効果がある。
Frobenius projection matrix
Projection matrixはランクを落としつつ元のJI空間(指数に非整数も許したもの(分数モンゾ (en) ))に写像する行列である。これ自体は一意性はないが、ムーア・ペンローズ逆行列を使うなどすることで抽象的テンペラメントごとに一意のFrobenius projection matrixが得られる。これはまたFrobenius tuningを導く。
(後略)